睡眠こそ最強の解決策である 書評

  • 2021年7月20日
  • 2021年11月10日
  • 睡眠

私たちが毎日行っている「睡眠」

そんな睡眠について皆さんはどれ程の知識を持っているでしょうか?

改めて聞かれると、「睡眠は疲れを取るために重要」ということ以外のことをパッと思いつく人は少ないのではないでしょうか。

本書では睡眠中に頭の中で何が起きているのか詳しく解説しており、更に良質な睡眠を取るためにどうしたら良いのか。個人レベルはもちろん、社会全般に対する睡眠の在り方を示しています。

睡眠の力は生活に与える影響は大きく、今まで意識してこなかった睡眠の力をより有効に使えるようになることは生活を豊かにするには必須と言えます。 睡眠に関して悩み事がある人は勿論、そうでない人もこの機会に「睡眠」について学んでみませんか。

どんな本なのか?

睡眠に関する専門書。サンデータイムスにてベストセラー1位、タイム誌など5誌でベストブックスに選ばれるなど、全米・全英で大ヒットした本です。

睡眠とは何なのか。私たちが良く耳にするレム睡眠、ノンレム睡眠の解説から始まり、睡眠が人間の生活にどのような効果をもたらしているのか詳細に記載されています。

睡眠に関する様々な研究結果を交えて、睡眠に関する事象が書かれているため、この本を読むだけで、睡眠に関して広範的な知識を手に入れられる1冊です。

出版日&ページ数

  • 2018年5月19日出版
  • 320ページ

こんな人におススメ

  • 睡眠について広く勉強したい。
  • 寝ている間に頭の中で何が起きているのか知りたい
  • 睡眠時間をムダと感じている、寝る時間がもったいないと感じている人

作者について

作者 マシュー・ウォーカー

肩書 睡眠コンサルタント、睡眠科学者、カルフォルニア大学バークレー校教授、

   睡眠・神経イメージ研究室所長

略歴 英国ノッティンガム大学で神経科学の学士号を取得。その後、ハーバード大学医学部の精神科助教授に就任。現在はカルフォルニア大学バークレー校の神経科学と心理学の教授、睡眠・神経イメージ研究室所長を務める。

健康と病気の集団におけるの人間の脳機能に対する睡眠の影響を研究し、80以上の科学研究調査を発表している。

本の目次

PART1 眠りとは何か?

第1章 「眠り」という謎

第2章 睡眠リズムを取り戻す

第3章 レム睡眠とノンレム睡眠

第4章 ヒトは眠りで進化した

第5章 年齢と睡眠

PART2 なぜ眠りが重要なのか?

第6章 記憶力と睡眠

第7章 睡眠不足と脳

第8章 睡眠不足が寿命を縮める

PART3 なぜ夢を見るのか?

第9章 レム睡眠の異常な世界

第10章 夢は傷ついた心を癒す

第11章 夢と創造と問題開発

PART4 睡眠とどう向き合うべきか?

第12章 睡眠障害と眠らないことによる死

第13章 あなたを眠らせない犯人は誰か

第14章 眠りを妨げるもの、眠りを助けるもの

第15章 睡眠のために社会は何をすべきか?

第16章 21世紀の新しい睡眠

本の内容

PART1 眠りとは何か?

PART1では、眠気はどのようなメカニズムで発生するのか、レム睡眠、ノンレム睡眠中にそれぞれ脳で何が起きているのかを解説しています。

このパートで参考になったのは記憶を定着させるには 23時~7時の間にしっかり睡眠を取ることが重要という点です。

睡眠には次の様な特徴があります。

  • 睡眠は90分毎にサイクルがある
  • ノンレム睡眠とレム睡眠は完全に交互に出現しているわけではない
  • ノンレム睡眠で情報を整理し、レム睡眠で情報を統合する

簡単にまとめると、 私たちは眠っている間、ノンレム睡眠とレム睡眠を交互に繰り返しています。

記憶を粘土に例えると、ノンレム睡眠の間は粘土を大まかに削り、レム睡眠の間に細部の作りこみが行われています。

そのため、ノンレム睡眠とレム睡眠をバランスよくとることが大切になるのですが、実際はそう上手くいきません。 なぜかというと、夜の前半にノンレム睡眠が優位に、夜の後半はレム睡眠が大半を占めるといった形で、睡眠のパターンが変わるからです。

そのため、寝るのが遅くなるとノンレム睡眠が、早朝に目が覚めてしまうとレム睡眠の比率が少なくなってしまうのです。

そして、23時~7時が睡眠の適正なサイクルのため、記憶をしっかりと整理、定着をさせたいのなら、上記の時間から大きく外れない時間帯に睡眠をとれるように、生活を整えていくことが重要なのです

PART2 なぜ眠りが重要なのか?

PART2では、睡眠と記憶力の関係性の掘り下げと睡眠不足がどのような悪影響を及ぼすかを解説しています。

そのパートで特に重要と感じた点は、以下の3つです。

  1. 6時間以下の睡眠で本来のパフォーマンスを発揮出来る人はゼロに等しい
  2. 睡眠不足の時は睡眠不足に気が付かない
  3. 学習したその日に寝ないと記憶は脳に定着しない

1.6時間以下の睡眠で本来のパフォーマンスを発揮できる人はゼロに等しい

ある研究では、6時間睡眠を10日間続けると、24時間起きていた人と同じレベルにまでパフォーマンスが低下下という結果となりました。

更に、その後も6時間睡眠を続けるとパフォーマンスの低下は止まらなかかったそうです。

忙しい現代人にとって6時間睡眠が当たり前という方も多いかと思いますが、この研究結果を考えると日中のパフォーマンスを向上させたいのなら、睡眠時間を延ばすことがすぐ出来て、確実な行動ということです。

「自分はショートスリーパーだからそんなに寝なくても大丈夫」という反論をしたくなる人もいるかもしれませんが、残念ながらその可能性はかなり低いでしょう。

別の研究によると、ショートスリーパーかどうかは遺伝子で決まることが分かっています。

その遺伝子はDEC2という遺伝子が突然変異したものであり、デトロイトのヘンリー・フォード医師は「5時間以下の睡眠でも眠くならず、脳の機能も全く低下しない人の数を全人口に対するパーセンテージで表すなら、四捨五入してゼロということになる」と発言しています。

「自分はショートスリーパーである」「寝なくても平気」というのは幻想であるため、 やはり睡眠時間の確保はすべての人が取り組むべき行動と言えるでしょう。

2.睡眠不足の時は睡眠不足に気が付かない

睡眠時間6時間は睡眠不足と言われても、いまいち実感が湧かない人も多いでしょう。

なぜなら、睡眠不足の人は自分が睡眠不足だということに気づけないからです。

睡眠に関する様々な研究で、睡眠時間の低下による能力の低下を被験者たちに尋ねると、共通して低下のレベルを過小評価していました。

そのため能力が低下した自分の状態に慣れてしまい、睡眠時間の基準がリセットされて慢性的な睡眠不足の状態に陥ってしまうそうです。

騙されたと思って、1週間7時間睡眠の生活をしてみて下さい。

それだけで、あなたの生活に大きな変化が生まれ、本来の力を発揮できるようになります。

学習したその日に寝ないと記憶は脳に定着しない

テストの前日に夜遅くまで勉強をしたことがある人は多いでしょう。

しかし、この勉強法は間違っていることが証明されています。

ハーバード大学メディカルスクールのロバート・スティックゴール博士の研究では、

133人の学部生を対象に、繰り返し同じ画像を見せて記憶してもらい、 その後画像の内容をどれくらい覚えているかテストを受けてもらいました。

更に学生を、

その日の夜に十分な睡眠をとり翌日にテストを受けるグループ

2日間十分な睡眠をとり2日後にテストを受けるグループ

3日間十分睡眠をとり3日後にテストを受ける3つのグループに分けました。

更に例外として、学習した夜は眠らず、その後2日間十分な睡眠をとり3日目にテストを受けたグループを作りました。

結果としては、睡眠には新しい記憶を定着させる効果があることが証明されましたが、それに加えて学習とテストの間にある睡眠の回数が増えるほど、記憶の定着も強化されていたというものでした。

一方で例外グループは、睡眠による記憶の強化は全く認められませんでした。

つまり、何かを新しく学習したその日の夜に眠らないと、記憶を刻み付けるチャンスを失ってしまうことになるのです。

何かを学んだり、貴重な経験をした日は高揚感からなかなか眠れないかもしれませんが、 その記憶を保存するためにしっかり睡眠を確保しましょう。

PART3 なぜ夢を見るのか?

PART3では夢について解説をしています。

このパートでためになったポイントは以下の2点です。

  • 夢は心の傷薬
  • レム睡眠が記憶をつなげ、問題を解決する

夢は心の傷薬

嫌な記憶を夢で見たことはありませんか。

そんな日の寝起きは「最悪」かもしれませんが、実はその経験が心の傷を癒やしてくれているそうです。

12人の大人をテストの間ずっと起きているグループAと間に睡眠を挟んだグループB 2つのグループに分けて感情を動かすような画像を見てもらい、MRIの画像と参加者の自己申告による感情を記憶した実験を行いました。

その結果、睡眠を挟んだグループBは2回目に同じ画像を見たとき、1回目よりかなり心が落ち着いていたと自己申告した。MRIの画像でもネガティブな感情を生む偏桃体の活動が大幅に減ったことを示しました。

この実験では睡眠中の脳の動きも記録していましたが、その記録からレム睡眠で夢を見ている時間が心の傷を癒していることが分かりました。

更に別の調査では、トラウマになるような体験をした直後に、その体験の夢を見た人だけがその後に抑うつ状態を脱し、心の問題を克服したそうです。

つまり、心の傷を癒すためには、レム睡眠で傷の原因となっている経験と同様の夢を見ることが有効ということ。

思い出したくない嫌な経験を夢で何度も見るという人は、「脳がその経験を克服しようと頑張っているんだ」と考え方を変えてみると、前向きな気持ちで心の傷と向き合えるかもしれません。

レム睡眠が記憶をつなげ、問題を解決する

寝る間を惜しんで勉強している人は今日から辞めて下さい。

なぜなら、睡眠によって頭の中が整理され、記憶が定着するからです。

スティックゴールドの研究では、ノンレム睡眠、レム睡眠中の被験者を起こし、90秒間でできる簡単な認知テストをさせるといった実験を行いました。

その結果、ノンレム睡眠から目覚めたばかりの被験者はほとんど正解できなかったのに対し、 レム睡眠から目覚めた場合は、日中の覚醒時よりも正解が15~30%高いという結果になりました。

更に追加の実験を行ったところ、通常の状態なら結び付けないような知識も、関係なくつながりを作ることが出来ました。 このことから、人間は考え事や問題を睡眠中に解決することが出来る機能が備わっていると筆者は語っています。

いくら考えても解決策が思い浮かばなかった問題が、朝起きたらあっさり解説したという経験をしたこと人も多いのではないでしょうか。

「問題を寝かせる」という言葉がある通り、ある程度考えて答えが出ない様なら、一旦諦めてしっかり睡眠をとって、睡眠中の脳に任せてみてはいかがでしょうか。

PART4 睡眠とどう向き合うべきか?

最後のパートでは、

不眠症などの睡眠に関する問題。私たちの睡眠を妨げるもの。 現代の環境が起こしている睡眠に対する課題。社会問題として睡眠を充実させていくため将来に向けて何が必要なのかが描かれています。

このパートでは 誰もがより良い眠りを獲得できる方法 がまとめられており、非常に参考になりました。

誰もがより良い眠りを獲得できる方法

筆者が一番のアドバイスとしておススメしているのは

平日、休日に関わらず、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる」という方法。

睡眠の質を向上させるためには、これがおそらく最強の方法とまで述べています。

他にも運動と食事にも触れており 運動を行った方が睡眠時間、睡眠の質ともに向上する傾向にあるものの、確実にまでは言い切れないそうです。

また寝る直前に運動をしてしまうと寝付けなくなってしまうため、運動は寝る2~3時間前には終わらせるようにすることを推奨しています。

食事については大規模な疫学的研究でも、特定の食べ物が睡眠の時間や質に影響を与えることは証明されていません。 しかし健全な眠りのためには満腹すぎても、空腹すぎても良くないそうです。

根拠は研究の結果、炭水化物が全摂取カロリーの70%を超えると、睡眠に悪い影響が出るこという点からです。

忙しいのに睡眠の質が悪くて困っている人は、炭水化物ばかり食べていないか食生活から見直してみるのも良いのではないでしょうか。

書評

睡眠コンサルタントが書いた本だけあって、睡眠に関する知識がぎっちり詰め込まれています。

私は仕事柄、睡眠の重要性は意識しているつもりでしたが、この本を読んで「睡眠にはそんな効果があったのか」「なんとなく感じていたことが科学的にも証明されているんだ」と様々な発見がありました。

全320ページと大ボリュームで、翻訳も堅い印象を受け普段読書をしない人からすると手を出しづらいかもしれません。

しかし各項目はシンプルにまとめられているため、関心のある部分だけ読むことも出来るため、 睡眠に関して良くも悪くも関心がある人には手に取って欲しい1冊です。

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