仕事や勉強など、集中しなければいけないのに、「集中できない」「つい別のことをしてしまう」という経験は、あなたも一度はあるのではないでしょうか。
集中したくても上手くいかない原因は、人類の進化の中で発達してきた私達の「脳」の仕組みに原因があります。
この本では、私たちの「脳」がどの様なことに集中しやすいのか。そもそも集中力とは何なのか。
集中力を上げるためにはどのような行動をとればよいのか、科学的な根拠をもとに解説しています。
この本を読んで、皆さんも自分の集中力を操る術を磨いてみてはいかがでしょうか?
どんな本なのか?
集中力を生み出す脳(心)について、本能≒獣、調教師≒理性と比喩し、本能と理性の特性を解説しています。
力を引き出すくするための食生活、目標設定法や自己イメージを変えて集中力を高める方法等、科学的根拠を基に様々な角度から集中力を高める方法がまとめられています。
本の概要
- タイトル ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45
- 作者名 鈴木祐
- 発行日 2019年9月20日
- ページ数 264ページ
- 価格 単行本1540円 kindle版1386円
こんな人におススメ
・もっと集中力を高めて、生産性を上げたい人
・勉強や読書に挑戦しているが、集中力が続かなくて困っている人
・集中力について知識を深めたい人
作者について
作者名 鈴木祐
職業:サイエンスライター
経歴:慶応義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。 10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がけています。
ブログ「パレオな男」を運営しており、心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続けています。
この本の読みやすさ
本の難しさ | 3 |
読みやすさ | 3.5 |
手軽さ | 3.5 |
生活への生かしやすさ | 4.5 |
総合 | 3.5 |
テーマごとにしっかり区切られていて、序章を読んでしまえば、関心がある章から読んでもしっかり理解できる構成となっています。
ボリュームはありますが、文章も難しくなく読みやすい分類だと思います。
本の内容
序章 獣と調教師~ポテンシャルを400%引き出すフレームワーク~
集中力という能力は存在しない?
集中力を発揮するにはあらゆる能力が要求されます。
作業に取り組むときは「自己効力感」と「モチベーション管理能力」の2つが、次に必要になるのが「注意の持続力です。」。
成人の平均的な注意の持続力は20分程度。
集中している時に無意識な連想が始まった際に必要なのが「セルフコントロール能力」 集中力はいくつものスキルが絡み合っているのです。
「獣」は単純で過敏だが、超絶パワーを発揮する!
本書では、脳の特性を「獣」と「調教師」に喩えて解説しています。
「獣」の持つ3つの特性として、次のように述べています。
①難しいものを嫌う
獣はエネルギーの浪費を防ぐために難しさを嫌います。
人の名前の読みやすさだけで、好き嫌いを決めてしまうほど分かりやすいものを好む程、獣はものぐさなのです。
②あらゆる刺激に反応する
獣は情報の並列処理が大の得意。このデータ処理力がなければ、人間はまともに生活できません。
話ながら会話の内容を考えられるのも、この能力があるため。
獣の力によって、私達は円滑なコミュニケーションを取ることが出来ているのです。
③パワーが強い
獣は秒間1100万もの情報を処理し、瞬時に人の体を乗っ取るパワーを持っています。
美味しそうな料理の写真を見た後で、食欲を起動させて意識を乗っ取るまでの時間は100分の1秒。
反射神経が早すぎるため、意識的に獣の活動を抑えるのはほとんど不可能です。
「調教師」は理論的。大飯食らいの割に、力がショボい…
調教師の持つ3つの特性
①理論性を武器に戦う 調教師はデータの直列処理しかできない。
一つの情報から順々に考えて結論を導けるが、獣のスピードとパワーには圧倒されやすい。
②エネルギー消費量が多い
調教師は複数の情報について思いをめぐらせるため、獣に比べてエネルギー消費量が多い。
調教師の動きはワーキングメモリに依存するため、制約がかかる不利な状況で獣と闘わなければいけない。
③パワーが弱い
とっさの状況に対するスピードがなく、獣に立ち向かうため多大なエネルギーを使い、最大の武器である論理性の刃ももろい。
集中力向上のための3つの教訓
第1の教訓 「調教師は獣に勝てない」
獣と調教師の力の差は歴然、そのため「集中力アップには楽な道はない」ことを頭に入れておく。
第2の教訓 「集中が得意な人など存在しない」
程度の差はあれど、誰の頭の中でも獣と調教師の戦いは行われている。
第3の教訓 「獣を導けば莫大なパワーが得られる」
獣は人に害をなしたい訳ではなく、情報が蔓延している現代社会で機能不全を起こしている。 獣との正しい付き合い方を見つけ、パワーを上手く引き出してあげることで集中力をアップさせる。
第1章 餌を与える~脳の馬力を高めるサプリと食事法~
お手軽に覚醒作用を倍増させるカフェインの摂り方
多くの人が集中力アップや眠気を取るために、コーヒーを飲んでいますが、実は科学的に正しい飲み方があるのです。
科学的に認められているカフェインのメリット
・150~200mlのカフェインを飲むと約30分で疲労感が和らぎ、注意力の持続時間が向上する。
・カフェインの集中力アップ効果は、ベースラインから5%前後。
コーヒーの飲み方5原則
- ・一度に缶コーヒー2本(カフェイン400㎎)以上を飲まない
- コーヒーにはミルクかクリームを入れる
- 起床から90分はカフェインを飲まない
- アメリカ陸軍開発のスケジューリングサービス「2B-Alert」を使う
- 緑茶に含まれるリラックス成分「テアニン」と一緒に飲む
2B-Alert は海外のサイトになりますが、こちらのサイトを参照すると戸惑わずに使うことが出来ます。
食べるだけで脳機能が上がる魔法の食事法
脳にいい食事を続ける超簡単な3つのルール
- 脳に良い食品を増やす
- 脳に悪い食品を減らす
- カロリー制限をしない
脳に良い10のフードカテゴリー
カテゴリー | 例 | 推奨摂取量 |
全粒穀物 | 玄米、オートミール、キアヌなど | 週に2625g |
葉物野菜 | ほうれん草、ケール、レタス、青梗野菜など | 1日に150g (調理した場合は75g) |
ナッツ類 | クルミ、マカダミア、アーモンドなど | 1日20g |
豆類 | レンズ豆、大豆、ひよこ豆など | 1日60g |
ベリー類 | ブルーベリー、イチゴ、ラズベリーなど | 1日50g |
鳥肉 | ニワトリ、鴨、ダックなど | 週に170g |
その他の野菜 | タマネギ、ブロッコリー、ニンジンなど | 1日に150g (調理した場合は75g) |
魚介類 | サーモン、さば、マス、ニシンなど | 1日120g |
ワイン | 主に赤ワイン | 1日グラス一杯(150g) |
エキストラバージンオリーブオイル | — | 調理油 ドレッシング用に使う |
脳に悪い7つのフードカテゴリー
カテゴリー | 上限摂取量 |
バターとマーガリン | 1日小さじ1杯まで |
お菓子・スナック類 | 週に5食まで(1食=ポテトチップス1袋) |
赤肉・加工肉 | 週に400gまで |
チーズ | 週に80g |
揚げ物 | 週に1食まで(一食=唐揚げ) |
ファストフード | 週に1回まで |
外食 | 週に1回まで |
第2章 報酬の予感~脳内ホルモンを操る目標設定の奥義~
死んでしまうほど熱中する「ゲーム」の力をハックせよ
ゲームには獣を熱中させるために進化してきた歴史があります。
特に報酬の出し方が最適化されており、「ニアミス演出」と「スピード感」が獣に大きな影響を与えます。
「ニアミス演出」
ギャンブラーを対象にした実験によると、ニアミス演出を目撃したプレイヤーの脳は大当たりを引いた場合と同じレベルの興奮度を示したそうです。
「あと少しだった」という感覚は人のモチベーションを引き出します。
スロットのリーチ演出などは、上手くこの心理を煽っているのです。
「スピード感」
スロットマシンは1回のプレイに時間がかかりません。
そのスピード感が獣を刺激し、「もう少しで凄い報酬がもらえるのでは」と期待感を高めます。
上記2つに共通するものは「報酬の予感」です。
獣は「報酬の予感」にこそ最大のパワーを発揮します。
「報酬の予感」をコントロールすることで、集中力を高めることが出来るのです。
そのための基本的な戦略として、下記のポイントを意識することが重要です。
- 役に立つ「報酬の予感」を増やす
- 役に立たない「報酬の予感」を減らす
あなたの仕事を「クソゲー」にしてしまう2つの要素
集中力がキープできない人にありがちな2大要素
①不毛タスク
「この作業は何のためにやっているんだろう」と疑問を持ってしまうようなタスクのこと。
「とりあえずこれやっといて」と、理由を聞かされずに支持された単純作業などは、モチベーションが湧きませんよね。
モチベーションが湧かない作業に獣は反応してくれません。
自分の仕事や作業に何の意味があるのか、ハッキリさせることが大切なのです。
②難易度エラー
難易度エラーとは、タスクの難しさが自分に合っていない状態のことです。
2016年にコロンビア大学で行われた実験で、スペイン語の単語を覚えるテストを 「難しい」「なんとか解けそう」「簡単」の3つのパターンに分けて出したところ、一番高い集中力を発揮したのは「なんとか解けそう」のグループでした。
獣はの思考パターンは次のようになります。
- 難しすぎる場合=がんばっても報酬が得られそうにないから放っておこう
- 簡単すぎる場合=いつでも報酬は得られそうだから放っておこう
「少し難しいぐらい」の難易度が獣を刺激し、集中力が発揮できるのです。
報酬感覚プランニング
基本設定シート
1.ターゲット | |
2.重要度チェック | |
3.具象イメージング | |
4.リバースプランニング | |
5.デイリータスク設定 |
1.ターゲット どうしても集中力が続かない作業から、自分にとって最も重要なことを書き込む。 例、「筋トレをする」「食事の改善」
2.重要度チェック その目標を達成しなければならない理由を考えて、もっとも大事なものを一つだけ書き込む。 例、「かっこいい体をつくる」「健康のため」
3.具象イメージング 1で選んだ目標を、より具体的なイメージに変換する。 例、「筋トレを継続し、友人から体つきが変わってきたと声を掛けられる」 「獣は抽象を理解できない」ため具体化し獣が理解できるように落とし込む。 この時に、2つのポイントに気を付ける。 ・専門用語を使わない ・数字を使わない
4.リバースプランニング 目標達成までのサブゴールと期日を設定する。 最終の目標イメージから現在にさかのぼる形で短期目標を決める。 例、目標イメージ「毎日筋トレをする」 リバースプランニング「3か月後に腹筋を6つに割る」→「1か月後までに1日腹筋100回出来るようにする」→「2週間後まで1日腹筋50回出来るようにする」
5.デイリータスク設定 リバースプランニングで決めた目標の中から、最も締め切りが近いものを選び、それを達成するために毎日行うタスクを決める。 例、サブゴール「2週間後までに1日腹筋50回出来るようにする」 デイリータスク:「毎日腹筋を限界までやる」「1日35回から1回ずつ回数を増やしていく」
第3章 儀式を行う ~毎回のルーティンで超集中モード~
一見無駄に思える「マイ儀式」ですが、ここ数年で「儀式」に関する研究は増えています。
その結果は驚くもので、「マイ儀式」に隠された効果が次々と明らかになっています。
例えば、ゴルファーがボールにキスをする仕草をしたら、パットの確立が38%も上がるなど、複数の研究結果が出ています。
心理学的な定義では「儀式」とは 「厳格さ」と「反復」という2つの特徴を持つ、あらかじめ決められたプロトコルとされています。
不確定なことが多い、自然の中で「獣」は「反復」に強く反応するようになったのです。
この習性を利用し「マイ儀式」を作り「反復」の力を使うことで、「獣」のパワーを良い方向に導くことが出来る様になります。
「マイ儀式」づくりの2つの条件
- 「この動作をしたら大事な作業に取り組む」と決める
- 決めた手順を何度も繰り返す 実際に行う内容は、作業に関係なくても良い。
「できた!」を繰り返し記録して達成グセをつける
ある実験では、家計簿をつけた被験者たちが4か月後に集中力向上、ストレス低減の変化が起きました。
簡単にできる記録が「獣」に手ごろな達成感を与え、集中力をブーストする結果になったのです。
家計簿でなくとも、進捗状況を記録し可視化するのは、集中力やモチベーションを持続するのに効果的です。
進捗状況の記録の2つのポイント
- 行動を変えたい時には、自分がとった行動だけを記録する
- 結果を出したい時には、結果への過程だけを記録する
(例) ・貯金を殖やしたければ、貯金額の増減だけを記録する
・運動を続けたければ、ジムに行った日数だけを記録する
「小さな不快」で獣を刺激する
日常的に小さな我慢を繰り返していると、少しずつ「獣」の中に 「自分には未来の結果を左右する力があるのだ」という感覚が生まれます。
この感覚が大きくなると、獣の力をコントロール出来るようになります。
そのためにも日常の中で、8~9割我慢できる「小さな不快」を与えて、「獣」のトレーニングを行ってみましょう。
この時のポイントは「5のルール」を意識することです。
「5のルール」で小さな不快を重ねる
作業を止めたくなったら、とにかく5の数を使ってタスクを続けてください。
- 仕事を止めて休憩したくなったら、あと5分だけ続ける
- 腹筋を辞めたくなったら、あと5回だけ続ける
- 作業に対するやる気が起きないときは、頭の中で5からカウントダウンを始めて取り掛かる。
(例) 状況:「運動したいのに気持ちが上がらない」 対策:「頭の中で5からカウントダウンを始め、ゼロになるまでにとりあえず動き出す」
儀式は週4回2か月続けると完全に身につく
2015年ビクトリア大学で行われた、 フィットネスジムに加入したばかりの男女を12週間調査した結果によると、
- 週に4回ジムに行った人は、エクササイズが続く可能性が大きく跳ね上がる
- 週のジム通いが4回より少ない人は、エクササイズが続く可能性は大きく低下する
- 6週目から12週目にかけて、週4回より少ないグループはエクササイズの継続率が低下した
という結果が出ました。
つまり、儀式が自動化されるには、最低でも週4回は行う必要がある
・6週目までは徹底的に反復しないと、それ以降はもとに戻ってしまう という事が言えます。
その他の研究結果も加味してまとめると、儀式を身につけるには 「週4日以上のペースで6週~8週間は行う」ことが必要になると考えられるのです。
これは、儀式に限らず習慣化したいこと全てに当てはまることなので、習慣にしたいことがあるなら、週4日のペースで2ヶ月は続けるようすることを意識しましょう。
第4章物語を編む~セルフイメージを書き換えて「やる」人間になる~
確固たるアイデンティティがあれば獣をしつけられる
人は自己像を守ろうとする意識の働きを持っています。
そのため、「自分は〇〇である」という自己像(セルフイメージ)を持っていると、自己像に沿った動きをとる確率がアップします。
例えば 「自分は読書家である」と定義した場合 「本を読みたくない」気持ちと「自分は読書家である」という意識の間に挟まれ不快感を感じるようになります。
この不快感を解消するためには、自分のアイデンティティを守るしかなく、「獣」は本を再び読み続けるために動き出すといった具合です。
ここで重要なのは、あくまで自分の作ったイメージで良いということです。
なりたい自分を思い描いて、後から行動をイメージに近づけていきましょう。
セルフイメージを上書きする5つの方法
レベル1 ステレオタイピング
有能な人を思い描くだけでも人間のパフォーマンスはアップします。
作業に取り掛かる前に集中力が高い人(有名人でも可)を思い描くと、パフォーマンスが向上するという研究結果もあるので、作業を始める前は、憧れのあの人を思い出してみましょう。
レベル2 ジョブ・チェンジング
問題のタスクに対して、自分に新たな「肩書き」をつけることで、意味付けも変えることが出来ます。
例としては、病院の清掃スタッフに対して、「清掃の仕事は治療の一環であり、あなたたちは「病院のアンバサダー」なのです」と伝えたところ、スタッフのモチベーションが向上しました。
事実ベースで自分に肩書きを付けることで、モチベーションが上がり作業に集中して取り組めるようになるのです。
レベル3 指示的セルフトーク
自分自身に「ひとりごと」で声をかけ、集中力をアップさせるテクニック 質問例 ・なぜ集中力が落ちたのか?作業が難しいか?それとも何かに邪魔されたからか? ・集中力が落ちた原因を解決する方法はないか? ・もっとも理解できないポイントはどこだろうか? ・今の作業の難易度は正しいだろうか? ・作業への興味を湧き立たせる方法はないだろうか?
レベル4 VIASMART
ノースセントラル大学の実験で効果が実証された自分の強みを生かしたテクニック ステップ1 VIAのサイトで強み診断のテストを受ける(無料) 自分の強みのトップ5が表示されるため、その中から最も気になったものを1つ選ぶ。 ステップ2 強みを生かす方法を考える ステップ1で選んだ強みを毎日の目標や作業に生かす方法を考える。 ステップ3 SMARTで計画を考える SMARTの意味 Specifle(具体的)=出来るだけ具体的で明確な目標に落とし込む Measurable(計測可能)=目標の達成度が数字で把握できるようにする Achievable(達成可能)=夢のような目標ではなく、現実に達成できそうなレベルを選ぶ Related(関連性)=その計画が重要な仕事の内容に関係があるかどうか確認する Time-bound(締め切りが明確)=いつまでに目標を達成するか決める
レベル5 ピアプレッシャー
2012年に発表されたハーバード大学の論文によると、 「平均して私たちの生産性の10%以上は隣に座る席人間の質で決まる」と結論付けている。 要するに、出来る人の近くにいれば出来る人間になり、生産性の低い人の近くにいれば自分の生産性も低下するということ。 つまり、集中力が高い人に紛れ込めこむことが出来れば、集中力が高まる。 ・熱心に勉強する人たちが集うカフェに行く ・会社内のハイパフォーマーと友人になる 方法はどのようなものでも良いですが、集中力が高い人たちのグループに所属することが重要。
第5章 自己を観る~マインドフルネスで静かな集中を取り戻す~
平静な自分を取り戻すデタッチド・マインドフルネス
デタッチド・マインドフルネスとは?
・思考や感情から距離を置いて、ひたすら観察に徹する行為
デタッチド・マインドフルネスを身に着ける3つのステップ
ステップ1 メタファーでつかむ
観察のコンセプトを理解するための3つのメタファー ①雲のメタファー 雲の中にいる自分のそばを、別の雲が通り過ぎていくのを眺めているイメージ。 デタッチド・マインドフルネスは、ただひたすら雲の動きを記録する科学者のような感覚 ②電車のメタファー 自分の心を駅のようなものと考えてみる。思考と感情は益を通り過ぎる電車のイメージ。 電車には乗らずに、ホームから去るのをただ眺める。 ③牧草地のメタファー 言うことを聞かない牛を牧草地で飼っているイメージ。 牛をコントロールしようと周りをフェンスで囲っても、牛は自由を求めて暴れ出し、被害が大きくなってしまう。ここで必要なのは牛が自由に動き回っても問題ない、広い牧草地を用意してあげること。 これらのメタファーを理解するだけでも、ある程度「デタッチド・マインドフルネス」を使えるようになる。
ステップ2 聖域を作る
新しいスキルを身に着けるための環境づくりを行う。 ①場所の管理 作業をする専用の部屋を作り整理するのは勿論、部屋の一角を区切り、〇〇の専用場所と決めても効果がある。 ②デジタルの管理 スマホなどのデジタル機器による注意力散漫を防ぐ。 スマホの魅力度を下げる、使用するのに手間がかかるようにすることが重要。 (例) ・専用のPC、スマホを用意する ・ユーザーアカウントを切り分ける ・コンテンツブロッカーを使う ③音の管理 音楽を上手く使い集中力アップ 性格が外交的か内向的かでBGMによって集中力が上がるかどうか変わる。 ・外交的な人=作業中の音楽で集中力が改善する。 ・内向的な人=作業中の音楽で集中力が低下する。 外交的な人であっても、歌詞が付いた曲は厳禁。 曲の情報量が多く、獣の意識が向かいやすくなってしまうため、歌詞がないものを選んだほうが良い。
ステップ3 調教師を切り離す
・ムードスコアリング 大事な作業から注意がそれたときに、内面に起きた感情の変化をパーセンテージで採点するトレーニング法。 方法:自分がどのような感情を感じていて、強度がどれくらいかパーセントで表現をしてみる。 自分の変化を客観的に見つめることで、理性を失わずに対処が出来るようになる。
・感情の物質化 作業中に沸き上がった感情に対して、「今の気分が物体だったらどのような感じだろう」と考えてみるトレーニング 自分の感情を物体として想像しながら、そのイメージを科学者のように見つめるのがポイント。 上手くイメージできない時には、以下のような質問を投げかけるとよい。
・その感情はどのような色をしているか? ・その感情のサイズは? ・その感情に触ったら、どのような感触がするか? 上記2つのトレーニングを繰り返すことで、獣の反応に対する理解が深まっていきます。 獣の傾向を知ることで、調教師が獣に巻き込まれにくくなります。 「感情の切り離し」を行うことで自分の感情と距離をとることが出来るようになりますが、 この時に大切なことが、「自分の感情を意図的にコントロールしようとしない」ことです。 無理に感情を押さえつけようとすると、獣は激しく抵抗する性質を持っています。 感情が動いていることに気が付いたら、距離を取り観察し、自然と獣が落ち着きを取り戻すを待つことがポイントになります。
第6章 諦めて、休む~疲労とストレスを癒すリセット法~
フロリダ州立大学の研究から、集中できない人たちの心理的な特徴として
①集中力を追い求めすぎる ②集中力がない自分を責めすぎる
という特徴があることが分かった。
①解説 どれだけ科学的に正しいテクニックを使っても、上手く集中力を発揮できない場面は必ず現れるもの。にもかかわらず、集中力を追い求めてしまうと、調教師が「自分には能力がないのだ」と考え始め、最終的には「自分は集中力がない人間なのだ」という新たな物語が加わり、アイデンティティとなってしまうため。 ②解説 自分を責める回数が多い人は大脳皮質の灰白質が少ない傾向にある。 灰白質は感情のコントロール機能に関わっており、調教師が上手く働くには灰白質のサポートが必要なため、灰白質の総量が低くなると、集中力もおのずと低下してしまう。 上記2つの問題に対応するために現代科学が出した答えは「諦める」という結論。 これは「セルフ・アクセプタンス」という考え方で、「無駄な抵抗はやめなさい」という意味。
ネガティブな思考をカチッと切り替えるセルフ・アクセプタンス
セルフ・イメージング
①失敗を悩んでいる自分に対して、友人が思いやりと理解を持ってアドバイスをしてきたところを想像する。
②その友人がどんな言葉をかけてきたかを細かく思い描き、紙に書き出す。
カリフォルニア大学が開発したテクニック。 単純なテクニックであるが、格段にセルフ・アクセプタンスのレベルが上がり、失敗を乗り越えて前に進むモチベーションを生む効果がある。
レスト・オブ・ライフ
自己批判の気持ちが湧いてきたら、以下の質問を投げかける。
・今の悪い状況は、自分の〇〇という考え方を証明するエビデンス(根拠)として使えるだろうか?
一度の失敗で、自分の考え方を決めつけられるケースはほとんどありません。 自分を責めてしまいがちな人は、一呼吸おいて自分に質問をしてみては如何でしょうか。
2分コミットメント
①1日6回だけ、必ずセルフ・アクセプタンスを行う時間帯を決める(起床後や寝る前など)
②決めた時間が来たら「過去の失敗体験」「ネガティブ思考」を思い出し、2分だけ批判しないまま放っておく 自分を批判しない時間を意識的に作り、継続することで獣から距離を置くスキルも身につく。
ポジティブリリース法
ミシガン大学が考案した手法で、基本的な考え方は以下の通り。 ・ゴールを達成できなくて自責の念がわいたら、何か仕事や勉強に役立つ新しいことをする 実験では、この手法を使ったグループは「好きな音楽を聴く」「マッサージを受ける」などの平凡な気晴らしを行ったグループよりも失敗のストレスに強くなり、その後の作業にも高い集中力を保てたという結果が出た。 ポジティブリリース法を使う場合は、 ①強みが使えるものを選ぶ ②学べるものを選ぶ 上記2点に注意し、自身の将来に役立ちそうなものを選ぶことがポイント。
疲労とストレスを科学的にリセットする方法
2016年に慶応大学とメルボルン大学が実施した実験によると、以下の結果が出た。
・週に30時間より多く働くと、認知機能にネガティブな影響が出る ・女性の場合は、平均で週に22時間~27時間の労働がベスト ・男性の場合は、平均で週に25~30時間の労働がベスト 日本人の平均的な労働時間は週45時間 日々の疲労やストレスで集中力は低下してく為、科学的に正しく休む方法が必要。
レベル1 マイクロブレイク
数十秒から数分の休憩を細かくとる手法。 40秒だけ作業の手を止め、自然の画像や外の景色を眺めるだけでも、生産性の低下を防げる。
レベル2 タスクブレイク
重要で難しい作業の間に、メールチェックやスケジューリング等の簡単なタスクをこなす方法。 カンタンなタスクを行うことで、一時的に脳の回転数を落とすことができ、完全に脳が仕事から切り離されないため、作業へのモチベーションを保つことが出来る。
レベル3 アクティブレスト
軽く体を動かして脳をリフレッシュさせる方法。 最大心拍の30%程度の運動を10分間行うだけでも集中力と記憶力が向上する。 ウォーキングで最大心拍30%の負荷がかかるため、10分間散歩をするだけで集中力を上げられる。
レベル4 ハイパー・アクティブレスト アクティブレスト
(散歩)より更に激しい運動で脳を休ませる方法。 激しい運動をすることで、脳のメモリを開放してくれ集中力が向上する。 負荷の目安としては、息が上がって会話が出来ないレベルを目指す。 息が上がれば運動の方法は何でもよい。 睡眠不足や体が疲れ切っている時は逆効果になるため、体調が良いときに限定して行う方が良い。
レベル5 米軍式快眠エクササイズ
集中力回復の基礎となる睡眠の改善法。 米軍がパイロットのメンタル改善用に開発したテクニックで、 この手法を使ったパイロットの96%が120秒以内に眠れるようになったという、驚くべき成果を出している。 やり方5つのステップとなっている。
ステップ1 顔リリース 椅子に座るかベッドに横になってリラックスしたら、顔のパーツに意識を向ける。 その後、ゆっくり呼吸をしながら下記の順番で顔の筋肉を緩めていく。 おでこ→眉間→こめかみ→目の周り→頬→口の周り→あご
ステップ2 肩リリース 顔の次は肩の力を抜いてく。 肩が地中に沈み込んでいくようなイメージで、だらりと力を抜くのがポイント。
ステップ3 腕リリース 肩の力は腕の力を抜いていく。 力みが取れない時は、一旦手をぎゅっと握ってから開くと良い。
ステップ4 足リリース 両足が地面に沈み込んでいくイメージ。 こちらも力みが取れない時は、一旦足全体に力を込めて緩めると良い。
ステップ5 思考リリース 最後に10秒だけ「何も考えない」時間を作る。 獣はネガティブ思考に弱く、ネガティブなことが頭に浮かぶだけで体に力が入ってしまう。 これを防ぐために、10秒だけ思考を遮断する。 どうしても考えてしまうときは以下のテクニックを使うとよい。 ・「考えるな、考えるな」と10秒だけ頭の中で繰り返す。 ・静かな湖畔でカヌーに乗り、青空をぼーっと見ているイメージを浮かべる。 ・暗い部屋でハンモックに揺られている様子をイメージする。
書評
集中力は勉強や仕事といったやらなければいけないことだけでなく、ゲームや読書、映画鑑賞など趣味を行うときにも必要となり、現代人には必須の能力と言えます。
そんな「集中力」について「獣」と「調教師」という比喩表現を使うことでイメージしやすく学ぶことが出来ました。 科学的に証明されているテクニックも数多く紹介されており、すぐに取り組めることもあるため、 日ごろから「集中力を発揮できていない」「やりたいことになかなか取り掛かれない」等、集中力に関する悩みがある人は是非一読してほしい一冊です。