あなたは普段どんな考え方をしていますか?
合理的な人もいれば直感を信じる人、様々だと思いますが、「クリティカル・シンキング」を使っています。という人は少ないのではないでしょうか。
あまり聞き慣れない思考法ですが、判断や選択をする時に役立つ思考法です。
本書ではそんな「クリティカル・シンキング」について、考え方から、トレーニング方法まで解説されています。
・クリティカル・シンキングとは何か解説
・本の読みやすさ、役立ち度を点数化してレビュー
本の概要
作者 DaiGo
発行年月日 2021年3月16日
ページ数 256ページ
本の目次
- 目次
- 第1章 凡人が天才に勝つ唯一の思考法
第2章 クリティカル・シンキングで得られる8つのメリット
第3章 「ソクラテス式問答法」をマスターしよう
第4章 正しく考える力を養う5つのトレーニング
第5章 悪い奴ら にダマされないための8つのクリティカル・シンキング
第6章 頭ひとつ抜けた説得力が手に入る「欠陥論理」の8つのパターン
第7章 他人を操作できる9つのクリティカル・シンキング
どんな本なのか?
クリティカル・シンキングとは何か、クリティカル・シンキングを身につけるためのトレーニング法といったクリティカル・シンキングについて基礎からしっかり学べます。
更に補足として、日常で騙されないためのテクニック、理屈の穴を見抜く「欠陥論理」といったテクニックにも解説されており、クリティカル・シンキングと組み合わせて使えば、正しい情報を見抜く力を高められます。
こんな人にオススメ
- 他人と違う考え方を身に着けたい
- 変化が激しい世の中に対応できるようになりたい
- 騙されやすい人
この本のポイント
クリティカルシンキングとは何か?
「クリティカルシンキング」を直訳すると「批判的思考」となります。
「批判的」と聞くとネガティブなイメージを持たれるかもしれませんが、決して他者を攻撃するようなネガティブなものではありません。
クリティカルシンキングが目指すのは次の2つです。
- 「人の思考には偏りがあるもの」という前提に立ち、あらゆる仮説を立て、根拠をデータで証明する。
- 具体的なゴールに向かって最適解を探し続け、出来る限り偏りのない主張を構築する。
噛み砕いていうと、自分自身の主張から
「本当にそれで合っていると言えるのか?別の方法は無いのか?」を自問自答する行為、考え方と言えます。
クリティカルシンキングで得られるメリット
「クリティカルシンキング」について、なんとなくのイメージがついたかと思いますが、
この考え方をすることで何のメリットがあるのでしょうか。
本書では「クリティカルシンキング」によるメリットを8つ紹介しています。
メリット1 キャリアの成功に役立つ
クリティカル・シンキングは、情報の分析力、問題解決力、戦略的な計画力といった複数のスキルの集合体です。
そんなスキルがあれば、キャリア形成で有利になるのは当然と言えます。
世界経済フォーラムによるレポートでは、クリティカルシンキングは「第四次産業革命に必要な能力トップ10」の2位に入っています。
このように、クリティカルシンキングの重要性に企業も気づき始めています。
- 人生のネガティブイベントを減らす。
- 豊かなキャリアアップが築く。
クリティカルシンキングを高めることで、このような可能性を高めることが出来るのです。
メリット2 物事を決めるのが上手くなる
物事を決める際に、深く考えずに決断をしてしまった。という経験をしたことがある人は多いでしょう。
これは、脳による「反射」が原因なのですが、クリティカル・シンキングを身につければ、その「反射」を止めることが出来ます。
クリティカル・シンキングの考えたができれば、あなたの脳は「深いモード」に切り替わり、反射的な決断をしなくなります。
メリット3 自分をよく理解出来るようになる
クリティカル・シンキングのテクニックに「What法」というものがあります。
この方法は「なぜ?」ではなく、「なに?」と自問を重ねて行くテクニックで、思い込みを取り除いて自己理解を深めるのに役立つ方法です。
- 「なぜパートナーといかないのか?」ではなく「なにがパートナーとの不和につながっているのか」
- 「なぜお金がないのか?」ではなく「なにが預金残高の不足につながっているのか?」
どうでしょう、「なぜ?」を使っているときよりも「なにが?」を使った問いの方が、前向きな考えや具体的な解決策が思い付きそうな気がしませんか。
このように日常の問題に「What法」を使うとより良い解決案が思い浮かぶと共に、自己理解が深まります。
メリット4 未来を予測しやすくなる
クリティカル・シンキングの基本テクニックである次の3つの手順を繰り返すことで、予測力を高めることが出来ます。
- 問題に関する自分の知識レベルを確認する
- その上で本当に役立つ情報を探す
- 新たなデータが加わるたびに結論を修正する
いきなり未来が予測出来る訳ではありませんが、繰り返すことで着実に予測力が高まります。
メリット5 コミュニケーションが上手くなる
クリティカル・シンキングには良好なコミュニケーションと重なるポイントが意外と多くあります。
1つ目のポイントは、情報が足りない部分に注意を向ける行為という点。
例えば、「1年前に会社をやめて独立した」という人がいた場合、多くの人が「どんな仕事を始めたのですか」と質問するでしょう。
質問として間違っている訳ではありませんが、相手からすると「よくある質問」で終わってしまい印象には残りません。
しかし、クリティカル・シンキングの考え方が身についていると「仕事を始めるまでの1年間の空白で何をしていたんだろう?」と疑問に思います。
上記の質問であれば、相手にとって思わぬ質問で、話が意外な方向に盛り上がっていくこともよくあります。
こういった情報の空白に目を向けるのは、クリティカル・シンキング的思考を持つ人の特徴であり、コミュニケーションに役立つ理由の一つです。
2つ目の理由は、あなたを「聞き上手」にする効果がある点
クリティカル・シンキングが習慣化していると相手の言葉に対して、自動的に2つの疑問が浮かぶようになります。
例えば、「私はピラティスが好きなんですよ」と相手に言われた場合
- ピラティスについて、自分が知っていること、知らないことはなにか?
- ピラティスに関する知識を引き出すには、どのような問いが最適か?
この疑問を基に、話を展開していくと
展開1 「自分が知らないこと」をベースにした場合
展開2 「最適な問い」をベースにした場合
このように、自分が興味を持てる内容、かつ相手の思考の負荷が低いため、よりスムーズに会話を勧めることが出来ます。
メリット6 嫌な気分を軽くしてくれる
クリティカル・シンキングのテクニックの一つに「ソクラテス式問答法」というものがあります。
このテクニックは相手に質問を繰り返すことで思考を深めるものです。
「ソクラテス式問答法」を自分に使うことで、メンタルが大きく改善するという研究結果も出ており、効果は実証済み。
クリティカル・シンキングが身につくことで、メンタル的にも強くなれるのです。
メリット7 フェイクニュースに騙されにくくなる
ネットニュースやSNSによって大量の情報にアクセスできるようになった現代。
手軽に情報を入手できる一方、真実ではない情報いわゆる「フェイクニュース」が問題になっています。
新型コロナの感染当初に「トイレットペーパーが足りなくなる」というデマが広がり、買い占めなど現実社会にも大きな影響を与えたのは、記憶に新しいですよね。
批判的思考とも呼ばれるクリティカル・シンキングがフェイクニュース対策に効くのは分かりやすいかと思います。
その効果は研究でも実証されていて、
■対象 クリティカル・シンキングの講座を受けた学生とそれ以外の学生
■実験内容
・気候変動に関する2つの情報を見て、どちらがより信頼性が高いのかを判断する(一つはスポンサー付きコンテンツ、もう一つは従来型のニュース)
・「福島の原発事故直後に周辺の植物が異変を起こした」というネットのウソ投稿を見て、どれくらい証拠に基づく情報なのか判断する。
■結果
クリティカル・シンキングの講座を受けた学生ほど、情報の精度を高く判断できた。
メリット8 発想力が広くなる
クリティカル・シンキングには、「前提を疑う」という要素が含まれています。
「前提を疑う」ということは、常識だと思うようなことにも疑問を抱く必要があるということ。
クリティカル・シンキング的思考を鍛えることで、自然と物事に疑問を持つ癖がつきます。
この考え方は良いアイディアを出す時の思考回路と同じ方法のため、クリティカル・シンキングの考え方が出来るようになると、自然と発想力も豊かになるという訳です。
クリティカル・シンキングを鍛えるトレーニング方法
弁証法的ライティング
弁証法では、メリットとデメリットをどちらも取り込むことで、もとのアイディアより良いものを目指すことが大きな特徴です。
次の3つのステップで思考を進めることで行われます。
- テーゼを考える
- アンチテーゼを考える
- ジンテーゼを考える
1.テーゼを考える
まず最初に、ものごとのメリットやポジティブな側面について考える。
きれいな花について考えるとすると、テーゼは「見た目が美しい」「香りが心地よい」となります。
2.アンチテーゼを考える
次に、物事のデメリットやネガティブな側面について考えます。
花の場合は「いつか枯れてしまう」ということがアンチテーゼとなります。
3.ジンテーゼを考える
テーゼとアンチテーゼを合わせて、新しい解決策を生み出す。
花のテーゼとアンチテーゼは「花は美しい、しかし枯れる」でした。
ここから考えられるジンテーゼの一つとして「花は枯れるが、その後に種を残して更に増える」というものが考えられます。
弁証法のポイント
このように物事のメリット、デメリットをつなげて新たな価値観を作るのが弁証法のポイントです。
この3つのステップで考える習慣をつけることで、批判的思考力が高まります。
テーゼとアンチテーゼを頭の中だけで考えるのは難しいため、この作業を行うときは必ず文章にすることがおすすめです。
弁証法を使えば、メリット、デメリットを理解した上で新たな方法の思いつきや、美味しいところ取りが可能になります。
判断に迷うことが起きたら、クリティカル・シンキングのトレーニングのチャンス。
弁証法的ライティングを行って批判的思考力を養いましょう。
本のレビュー
おもしろさ | 3.5 |
分かりやすさ | 4.5 |
読みやすさ | 4.5 |
手軽さ | 4 |
実用性 | 4 |
総合 | 4 |
DaiGoさんの本はシンプルで読みやすいのが特徴ですが、本書もかなり読みやすいです。
思考法という固いテーマではありますが、随所に例が入っているためイメージしやすい内容となっています。
書評
本書ではクリティカル・シンキングについて網羅的に解説されていて、入門にうってつけの1冊。
他のクリティカル・シンキングを扱った書籍と比較して安価なのも嬉しいところ。
弁証法的思考は今までも自然とやっていたこともあったなと振り返ることが出来て、自分がどのような思考の癖の理解にも役立ちました。
ソクラテクス式問答は、仕事で面談を行う場面でも役に立っており、人と話をする機会が多い人にとってはこの部分だけでも有用な情報になりえます。
後半の部分については、会話や議論についてのテクニックといった内容で、クリティカル・シンキングとの関連性が薄いような印象も持ちました。
しかし、世の中で使われているテクニックから身を守る知識が詰め込まれていて、1冊で2度美味しい内容でした。
DaiGoさんの書籍はどの本も簡潔に書かれているため、読みやすく普段読書をしない人でもスラスラと読めます。
疑うことが苦手だなと言う方は、ぜひこの本を読んでみてください。
正しく「疑問」を持つことができ、自分の中の常識を塗り替えるきっかけになるかもしれませんよ。