「幸せをお金で買う」5つの授業とは
「幸せをお金で買う」5つの授業はエリザベス・ダン/マイケル・ノートンによって2014年に出版された本です。
この本では、私たちが普段手にしているお金。
そのお金をどのように使えば幸せになることが出来るのか、様々な実験を結果をもとに5つの観点から説明したものとなっています。
使い方なんかよりも、そもそもお金がたくさんあれば幸せなじゃないのか、という意見もあるかもしれませんが、どうやら「お金」と「幸せ」の関係はそう簡単な関係ではない様です。
お金があれば人は幸せになれるのか?
私たちにとって大きな意味を持つ「お金」と「幸せ」
「お金」が増えたら増えた分だけ「幸せ」も増える。そう考えている方は多いのではないでしょうか。
ところが、「お金」と「幸せ」の関係性はそんなに単純ではないことが分かっています。
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ーベル経済学賞を受賞したことがある行動経済学者のダニエル・カーネマンの研究によると、
年収が7万5000ドルを超えると、それ以上いくら稼いでも日常の幸福感にまったく影響がないという結果が出ています。
日本円にすると900万円ですが、アメリカの平均世帯年収が7万1500ドルのため、日本の場合は平均生体年収550万円を少し上回る600万円が目安になりそうです。
ミネソタ大学のキャスリー・ヴォース等の研究では、
おもちゃのお金の束を渡し、数分間裕福になった未来を想像してもらったグループ。
おもちゃのお金を渡さずに翌日何をするか考えてもらったグループそれぞれの前で研究員が鉛筆をまき散らすという実験を行いました。
すると、おもちゃの札束を持ったグループの方が、拾った鉛筆の本数が少なかったそうです。
また、別の研究では、お金の写真を見ただけで、人は孤独な活動を好むようになり、友人との夕食よりも、料理の個人レッスンを選ぶという結果が出ています。
つまり、単純に「お金」があればあるほど「幸せ」になれるという訳ではないということです。
お金を使って幸せになるためにはどうしたら良いのか?
上記のように、お金をたくさん持っているというだけでは幸せにつながらないということが、科学的に証明されています。
しかし、お金が無意味であるとか、お金が悪いという話でもありません。
何を買うにも、何かをして過ごすためにもお金は必要になります。
大切なのは、お金をどのように使うかです。
はたしてお金を使って幸せになるためにはどうしたら良いのでしょうか。
「幸せをお金で買う」5つの授業では次の5つの原則を示しています。
- 経験を買う
- ご褒美にする
- 時間を買う
- 先に支払って、あとで消費する
- 他人に投資する
今回は「他人に投資する」に焦点を当て解説します。
他人のためにお金を使うと幸福度がアップする
カナダのバンクーバー大学で少し変わった実験が行われました。
通行に実験への参加の承諾を得た後、電話番号を教えてもらい、1つの封筒を渡したのです。
その封筒には5ドル紙幣と短い手紙が入っていました。
手紙の内容は2パターンあり、一つは
「今日の午後5時までに、自分への贈り物か、自分のための支出(家賃や光熱費の支払い等)のためにこの5ドルを使ってください」と書かれたもの。
もう一つには、
「今日の午後5時までに、誰かへの贈り物か、チャリティーへの寄付のためにこの5ドルを使ってください」と書かれていました。
更に、何人かは5ドルではなく20ドルが入っていた封筒を受け取っていました。
その晩、実験参加者に電話がかかってきました。
そこで、今どれくらい幸福と感じているか、渡されたお金をどのように使ったかを聞かれました。
自分のためにと書かれた手紙を受け取った人は、イヤリング、スターバックスのコーヒー、寿司などを買いました。
一方、誰かのためにと書かれた手紙を受け取った人は、親類の子供のためにおもちゃ、ホームレスにお金を与える、誰かのために食べ物やコーヒーをごちそうするといった使い方をしていました。
こうした買い物は人々にどのような影響を与えたのでしょうか。
結果は、他人のためにお金を使った人々は、自分のためにお金を使った人よりも明らかに幸福感が高まっていました。
この結果について、封筒に入っていた金額が5ドルであろうと20ドルであろうと幸福度への影響はありませんでした。お金の使い方の方が、金額の大きさよりもはるかに重要でした。
つまりこの実験から、たった5ドルでも、他人のためにお金を使うと自分自身の幸福度が高くなることが示唆されます。
日本円で500~600円程と決して大きな金額ではありませんが、幸福度に与える影響は大きいようです。
時々自分へのプチ贅沢を我慢して、代わりに身近な人にちょっとした贈り物をしてみたり、
募金活動をする等、少しの我慢と他人へ目を向けることで日々の幸福度を上げられるのです。
他人に投資して幸せになるための3つのポイント
本書では「他人に投資する」ことで幸福感を感じるためのポイントとして次の3つをあげています。
- 選択する
- つながりをつくる
- インパクトを与える
選択する
幸福度につながる「他人への投資」のポイントは、その行動が「自主的」なものであったかという点です。
オレゴン大学で行われた研究で、参加者は100ドルをもらい一部をフードバンク(寄付された食料を困窮者に配る施設)に寄付しました。
脳機能を調べる装置を付けた状態で寄付を行っており、お金を寄付するか選べるグループと、
寄付することを義務付けられていたグループに分けて実験は行われており、それぞれの脳の活動を比較したのです。
結果は、義務的に寄付を行ったグループも脳の報酬領域に活動が活発にはなりました。
しかし、寄付するかどうか選べたグループは脳の活動領域が大きくなり、自己申告による満足感も大きくなったというものでした。
何度も頼まれたり、その場の雰囲気に流され仕方なく寄付をした経験がある人もいるのではないでしょうか。
そうではなく、自分で選んで寄付をすることが、幸福感を高めることにつながるのです。
つながりをつくる
2つ目のポイントは「相手との関係性を深められるようなやり方で投資をする」です。
他人への投資をすることでより幸福感を感じやすいのは、「弱い結びつき(知人、義理の叔父など)」よりも「強い結びつき(重要な他人だけでなく親族、親友など)」の相手です。
また、お金の使い方も重要で、本書の例としてコーヒーをごちそうする際に、一緒に飲むことが幸福度が増したと紹介されていました。
つまり、ただプレゼントをするのではなく一緒に時間や体験を共有するなど、相手とのつながりを深められるプロセスが重要ということです。
一方的に寄付して終わりではなく、双方向につながれるという点を意識して、身近な人のことを思い浮かべながらお金の使い方を考えることが幸福への近道ということです。
インパクトを与える
最後のポイントは「自分の使ったお金が相手にどのようなインパクト(影響)を与えたか」です。
自分の行った行動が具体的にどのような影響をもたらしたのか分かれば、寄贈者にとって大きな報酬になるでしょう。
そんなに大きな金額を出せないから、影響なんて与えられないと感じるかもしれませんが、
本書でも紹介されているNPOのスプレッド・ザ・ネットでは10ドル寄付することで、マラリアネット(蚊帳)がサハラ以南のアフリカに送られます。
その地域ではマラリアによって多くの子供たちが命を落としています。
1張の蚊帳で5年間最大5人の子供たちを保護できるそうです。
1000円ちょっとの金額でも人の命を救うことができるのです。
あなたが人に与えられる影響は自分で思っているよりも大きいのです。
まとめ
「幸せをお金で買う」5つの授業の「他人に投資する」をまとまると次のような内容でした。
他人に投資をすることで幸福感を得られる。
そのための金額は少額でも構わず、500円程度でも意味がある。
更に3つのポイントとして、自主的に他人へ投資することを「選択する」
投資した相手との関係性を深めるられる使い方をし「つながりをつくる」
お金を使ったことで相手への影響をおよぼす「インパクトを与える」ことが重要という内容でした。
書評
私はこの本を読んでから、東日本大震災の被害にあった子供たちへの募金を始めてみました。
ネットで5分ほど手続きを行っただけで月1000円の募金をすることが出来ました。
金額は少ないですが、自発的に募金が出来たことの嬉しさと、副業を頑張って収入を上げてもっと募金が出来る人間になりたいという新たなモチベーションにもなりました。
「他人への投資」以外にも一般的な収入の家庭でも出来る方法がたくさん書かれた本なので、皆さんも一読し、自分も他人も幸せにできるお金の使い方を一緒に身に着けていきませんか。